福岡県大川市の若波酒造さんを訪問してきました [若波]

佐賀空港から30分程で筑後川が見えてきます。
大川市のシンボル昇開橋九州一の大河だけありさすがに川幅が広いですね。
右手に大川市のシンボル昇開橋が見えます。
国の重要文化財に指定されている昇開橋は稼働する昇開橋としては最古の橋だそうです。

大川は江戸時代に河川港の若津港が開かれ、穀物や木材の海運で繁栄してきましたが、
鉄道の開通とともに衰退し、やがて木工産業へと移行し、今では日本最大の家具の街として知られています。
そのため町のあちこちに家具メーカーが散見されます。



若波酒造蔵.jpg筑後川沿いを走ると程なく若波酒造さんに到着します。
道路を隔てた反対側は筑後川で、かつては川沿いに数件の造り酒屋さんがあったそうですが、今では若波酒造さんともう1軒のみになってしまったそうです。

早速蔵の中を案内していただきました。
昔は数千石を生産していたという蔵内は広々として、設備がゆったりと配置されています。
敷地もかなり広い印象を受けました。





若波酒造蔵内タンク.jpg
一昨年専務さんが蔵に帰ってから、大きなタンクは撤去し、小さめのタンクに切り替え、
洗米機を導入し、働きやすいように蔵内を改修し着々と設備を整えています。
現代の酒蔵では、良いお酒を造るには設備を整えることがある程度必要となっています。この秋には大型の氷温冷蔵庫を設置するそうです。

現在若波シリーズは23BYで約60石生産しています。
日本酒のほかには「あまおう」という苺を使用したリキュールを生産しています。
「あまおう」のタンクに顔を近づけると、甘い苺の香りが飛び込んできます。
美味しそうな香りです。


若波酒造スタッフ.jpg若波酒造さんのスタッフは写真をご覧ください。
右が今村嘉一郎専務さん、真中が専務さんのお姉さんで杜氏を務める今村友香さん、左が若き蔵人庄司さんです。
庄司さんは秋田の蔵で8年経験し、若波酒造さんに来られた方です。

利き酒処へ移り、8種類ほど利き酒しました。
ズラリと並んだお酒は全て火入酒で、しかも1回火入です。
若波酒造さんのお酒の特長はそのほとんどが火入酒で、生酒の出荷は極僅かです。
専務さんは「ウチは火入のお酒の方が向いているんです。」と話していました。
私は若波さんの火入技術は素晴らしいと思っています。
栓を抜くとプシューっと音がして栓が開くからです。
どのような瓶燗火入をしているのか聞いてみました。
火入温度は63度ですが、一気に上げずに馴らしながら上げていくそうです。

素晴らしい瓶燗火入のお陰で若波は火入に伴う苦味や独特の火入感がまったく無いんです。
専務さんも言われるように、若波は火入に向いたお酒なんですね。

さて利き酒ですが、若波シリーズの純米吟醸3種は仕込タンク違い、純米3種も仕込タンク違い、それと特別純米酒蜻蛉(とんぼ)と若波の番外編で造られた山田錦を73%に精米した純米です。
73%は波(なみ)のゴロ合わせで73%にしたそうです。
若波酒造甑.jpg
使用酵母は、純米吟醸は協会15号に近い秋田今野株で、純米は熊本酵母の9号を使用しています。

お米は若波シリーズの純米吟醸・純米共に麹米に福岡県糸島産山田錦を掛け米に福岡県三潴(みずま)産夢一献を使用しています。蜻蛉は麹米掛け米ともに夢一献です。


まずは純米吟醸の仕込5号~7号を利き酒してみます。
5号と6号は中温速醸で7号は普通速醸で仕込んだもの。
5号は品が良くてバランスが良いです。このお酒が今当店に入荷しているのと同じものです。
6号は5号より酸味が出ている感じですが、これも良いですね。
7号は骨格のしっかりとした味わいです。

純米3種は仕込1号~3号で、1号と2号が中温速醸で3号が普通速醸です。
飲んだ感じでは仕込1号が純米吟醸に似た柔らかいフルーツ感があり一番気に入りました。

山田錦を73%精米した純米は柔らかくてふくよかな甘味が良いです。
若波の特徴の一つは優しい甘味なんですが、特にこのお酒は柔らかくて優しい甘味が良いです。
若波酒造杜氏.jpg
若波酒造さんは今流行りのカプロン酸系酵母を使用していません。
その理由を杜氏さんは地元の魚介類に合う食中酒として考えた時に酢酸イソアミル系の酵母の方が合っていると思ったそうです。
また口に含んだ時に味が押してきて、スーッと引いていく「味の押し波、引き波」という若波のテーマにも酢酸イソアミル系酵母の方が合うようです。
蔵人の庄司さんは、酢酸イソアミルは火入することにより香りが際立つのですと話していました。
だから若波は、火入酒に合う酢酸イソアミル系の酵母を使用しているんですね。

次に、山田錦73%の1回火入酒を、割水の度合いを段階的に変えたものを数種類飲ませていただきました。
面白いことに割水の割合が増すごとに辛口になっていくのです。
この点を尋ねてみると、庄司さんは割水することによりブドウ糖が薄まるため辛口になると説明くださいました。

確かな火入の技術とオールドタイプの酵母から産み出される味わいは蔵元のコンセプトである「軽快で柔らかな味の印象とキレの良さ」を持った都会的な味わいになっています。
それは杜氏さんや専務さんそして庄司さんら若いスタッフの情熱から醸し出されたものなんです。

蔵を辞して、専務さんに柳川の街を案内していただきました。
柳川.jpg柳川は私の亡父の生まれ故郷です。一度は訪れてみたいと思っていたので、感慨もひとしおでした。
川沿いの柳の風情と川風を堪能し、空港へと向かいました。

車の中で専務さんに、いつから洗米機を導入したのか聞いてみました。
23BYからだそうで、そのためか22BYに比べ23BYの今出荷されているお酒の方が品が良いのは、蔵の設備改修による効果が出ているのかもしれません。
また、22BYはまだテスト段階で、若波を本格的に醸造しだしたのは23BYからだそうです。
火入感や苦味が無く、香り良くて柔らかで切れが良く、ほのかなフルーツ感を持った、新しいスタイルの火入酒を2年目で醸しだした若波に益々期待が高まるのを感じました。

いま生酒が全盛な時代に、あえて火入酒で勝負する若波、
若き姉弟と若いスタッフによる挑戦はまだ始まったばかりです。

皆さんぜひ応援お願いします。


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あみりん

今、自ブログのSake芯さんのコメントのお返事を書いていて、パッと頭に浮かんだ火入れしても生のフレッシュさを損なわないお酒が白瀑の「山本」黒ラベル(原料米:秋田酒こまち)だったんです。秋田系酵母を使用されているというところでなるほどと思いました。
カプ系にはならない、火を入れてもくもらない、キメ細やかな柔らかい酒質・・・まだ開けてませんが試飲した時の印象が蘇ってきました。
そしてホントに若い蔵元さん、少数精鋭で機械に頼るところは頼り、拘りの火入れに手間を惜しまず素敵ですね。
わたしも応援したくなりました♪
by あみりん (2012-09-26 19:09) 

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